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ご応募ありがとうございました。
日本有数の好漁場として知られ、多種多様な魚介類が水揚げされる島根県隠岐の島。この小さな島には、海と共に生きることに誇りを持ち、人と海に感謝しながら生きる。そんな人たちがいます。
今回は、カニかご船を担う後継者の募集です。
お金だけでは語っていけない。
漁師になる覚悟はもちろん、地域を担う覚悟も必要な仕事です。

19トンの漁船「松栄丸」
カニ漁の最盛期を迎え、にぎわう西郷漁協。
親の代から漁業を営む松栄丸は大忙し。松栄丸では一隻の船で海底のカニを獲るかご漁業を行っています。かご漁業とは、鯖などの餌を取り付けたかごを海底に仕掛け、匂いにつられて入ってきたカニを捕る漁法。網で大量に獲る底引き網と比べて、カニに傷がつきにくいメリットがあるそうです。また、網をひくのが困難な深海や、起伏に富んだ場所での操業が可能であることから、隠岐の島では盛んに行われています。
ここで水揚げされるカニはズワイガニ。ブランド名で隠岐松葉ガニと呼ばれる高級品です。冷凍ではなく生きたままの状態で流通します。日本海の中でも隠岐は美味しいカニが育つ地域の一つ。海底の地質やプランクトンの種類などカニが育ちやすい環境が整っています。
深夜の作業真っ只中。船の中から大量の松葉ガニが全て手作業によって下されていきます。そのあと、鮮度が命のカニを漁師さんたちが素早い手つきで箱詰めしていくのです。鮮度を保つための真剣勝負。カニを縦に入れるのは氷の冷気を循環させ鮮度にムラを出来にくくするためだそうです。
作業がひと段落したところで有限会社松栄丸の取締役社長、竹谷洋司さんがカニ漁について教えてくれました。
「カニ漁は解禁日の11月23日から2月23日の3ヶ月だけの漁。3ヶ月と言っても漁に出るのは20回くらいだな。冬の時期は出漁の日も時間もバラバラ。その日の時化や天候を見て出航するか決める。これが漁師ならではの生活だ」
20回と聞くと意外と少ないと思うかもしれません。なんでもカニは資源管理のため、水産庁がカニの漁獲量を規制しているんだとか。漁獲可能量(TAC)が決まっているため決められた量に乗っ取って作業をしなくてはいけません。海の資源のことも考えながら漁をする。これが海と生きる漁業の難しさ。
カニ漁というとベーリング海の荒波の中、何日もかけて命がけの漁をする一攫千金の男たちといったイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。日本のカニ漁は荒波の中で危険な作業であることに変わりありませんが、隠岐近海で漁をするそうです。そのため、一度出航したら港に戻らず働き続ける訳ではなく日帰りの漁になります。
「日によって違うけど、漁場までだいたい2時間ちょっと。往復で4時間くらいの場所かな。漁場についたら沈めていたかごを引き上げて行く作業。大量のかごを引き上げてカニをサイズごとに仕分けしていく。それの繰り返しだ。かごを全部あげたら、餌を付け替えてかごを沈める。これを繰り返すこと4回。長い時では10時間くらいの作業になるな」

左から藤田さん、田中さん
お話を聞いていると、やはり肉体的に大変そうなイメージ。そこで今年から船員になった田中さんに聞いてみます。
―カニ漁ってやっぱりきついですか?
「正直きついです。カニを船底から上げる作業は力がないと出来ないので。あとは、船酔いと寒さとの戦いですね」
第一に体力。漁業の自動化が進んでいるとはいえ、体が資本であることは今も昔も変わりません。そして、冬の日本海は荒い。寒さに耐えながら左右に揺れる海上での作業は想像以上に過酷なものだと言います。

カニ漁船に乗って5年目の佐藤さん
―船酔いは慣れるものなんでしょうか?
「船酔いは慣れますし、今は薬があるので抑えることが一応できますよ。僕は毎回飲んでますしね。あと船の上では年配の人が仕事を覚えさせようと親切心で教えてくれるけど、わからないし聞こえないことが多い。それで叱られる(笑)なんせ年間に20回しか乗らないから、次の年には忘れることも多いじゃないですか。だから慣れるまでは絶対にしんどいと思いますよ。まあ簡単な話、力があったら楽、なかったらしんどいってことです」
松栄丸では現在、11人でカニ漁に挑んでいます。ほとんどが個人漁師の方で、冬の時期だけカニ漁船に乗り込みます。日本海の冬はシケが多く、個人漁師は漁に出れないからです。佐藤さんは普段は釣り客向けの渡船をしているんだとか。
そのため、彼らはカニ漁の期間だけの船員であって松栄丸の従業員ではありません。今回の募集は、冬のカニ漁船に乗る船員募集ではなく通年雇用の後継者募集です。当然、冬以外の時期も他の漁船に乗って漁に出ます。
詳しくお聞きするために竹谷さんのご自宅に伺い、鍋を囲みながら改めてお話を聞きました。
―今回は乗組員ではなく後継者としての募集かと思います。では、カニ漁以外の季節はどういったことをするんでしょうか。
「あの松栄丸は冬の3ヶ月しか使わない。だから、あの船以外に刺し網用の漁船とレジャーボート3つ所有していてね。周年雇用の場合は刺し網と一本釣りも手伝ってほしいんだよ」
「ただ、右も左もわからん人に最初から高い給料はやれん。とくに漁師が初めての者には。漁師ってのは、海の底の地形まで覚えなくてはいけんからな。だから、カニ漁の給料は最低で15万円からにしちょる。そこからは歩合。あまり給料を出しすぎると興味本位、給料で飛びつく人がたくさん来るだろ。そんな人には継いで欲しくはないからな。カニ漁なんて特殊な漁業だから、そんな誰かわからん人に最初から大金は払えんわな。あと、そこから先は自分のやる気と努力次第だ」
まずは、信頼を積み重ねることが必要なのでしょう。
これを見ろと奥の襖に。ずらりと並んだ大量のお酒は大漁祈願で毎年、地元の方から頂くんだそうです。竹谷さん自身が長年かけて積み上げたきた信頼の証。漁師は様々な人との関わりから成り立つ職業だと改めて実感しました。
「もともと漁師は好かんかった。俺らが始めた時はもっと不規則で、休みなんていつになるかわからん。だから計画も立てれないし。水産学校を卒業して5000トンくらいの大型船に乗ろうと思ってたんだけど、ちょうど俺が18の時に母親が亡くなって。それで継ぐこと決めたんだよ」
「先代から船を引き継いだ時が37歳。歳は俺が一番下なんよ。船員は年上しかいないし、指示も出さなきゃいけない。その時は本当にきつかった」
そんな竹谷さんも今では漁業組合の役員や複数の代表を務めており、役職だけが増えていくと笑います。

船を降りれば、この笑顔
命の危険のある海の上とは違う表情
―どんな人と仕事したいですか?
「真面目なもんだわ。まあ若い夫婦がいいとは思うな。旦那さんは俺と一緒に漁師やって。奥さんはその海産物を加工してもらってとかは思うね。移住しても大丈夫なように一軒家を借りてるから夫婦でも住める」
「漁師の世界はそんな簡単にできるもんではないと思ってる。でも、やっぱり根付いて欲しいね。まだオレが海に出れる間に。オレも教えることができるのはあと何年かしかないけんな」
誰でもいいわけではない。でも自分の代で終わらせたくない。そんな複雑な気持ちが伝わってきます。歳を重ねるごとに漁師の将来、隠岐の島の未来への想いが募る。だからこそ、次の時代を担ってくれる人材を待っているのでしょう。

加工場で作る白いかの一夜干し
松栄丸では魚やイカの干物を製造販売もしています。竹谷さんの奥さんが手作りで作っているんだとか。つい最近、生産量を増やすため工場を改修したばかり。大型冷凍庫や真空パック機、活魚水槽も完備しています。
時間が空いた時には加工も手伝ってほしいそうです。海産物に付加価値をつけて通年出荷する。今でもご夫婦で挑戦を重ねています。

加工品を日本全国に発送しています
一人前の漁師になるには覚えることも多いそうです。船舶免許の取得や、漁業に関する知識が必要となります。そして、意外に思われるかもしれませんが、漁師をしていくにはコミュニケーション能力が大切になります。漁場は漁師みんなのもの。そこで普段から他の漁師さんとのコミュニケーションが必要になるのです。
海の世界で生きるというのは、競い合いながらも助け合うということ。このバランスが必要なのでしょう。後継者になるのであれば尚更です。繋がりを大切にし、地元の漁師と積極的に関わりをもたなければいけません。時には地域行事に参加したりと積極的に関わりを増やす努力が大切です。
たくさんの人に助けられながら、そして地域に溶け込みながら、ゆっくり着実に。それが漁師になるということなのかもしれません。
この小さな島において漁師とは島の歴史と文化そのもの。だからこそ、漁師を継ぐということは、この地域を担うということでもあるのです。地域に根ざしたものにしか許されない仕事を本気で目指したい方はぜひ連絡してみてください。
求人募集要項 | |
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企業名・団体名 | 有限会社 松栄丸 |
企業・団体情報 | 【業種】漁業、海産物の加工販売 【設立】平成16年11月 |
雇用形態 | 正社員 |
仕事内容 | ①刺し網、一本釣漁業全般(4月~10月) トビウオやアマダイ、白イカ等を自ら漁獲し、加工場にて真空パックや干魚にしながら出荷する作業。 ②ズワイガニかにかご漁業業務全般(11月~3月) 餌を入れたカゴをロープに一定間隔に取り付け海底に沈め、入ってくるカニを漁獲します。カゴへの餌入れやかご積み、漁獲したカニの選別やカニの箱詰め等が主な仕事となります。 |
採用人数 | 1名 |
給与 | 研修中:月13万+諸手当 研修終了後:月15万〜+諸手当 ズワイガニ漁期間:月15万〜+諸手当 ※技能・経験・年齢等を考慮し決定 |
福利厚生 | ・賞与あり(成果による) ・社会保険あり(厚生年金、健康保険、雇用保険、労災保険) ・船員保険、乗組員厚生共済 |
勤務地 | 島根県隠岐郡隠岐の島町港町指向40 |
勤務時間 | 刺し網、釣(4月~10月):8時間/日程度 ズワイガニ(11月~3月):15時間/日程度 ※季節、天候によって変更あり |
休日・休暇 | 土曜日、GW、年末年始、海上荒天時等 |
住宅 | 一軒家あり 船主より紹介します |
募集期間 | 〜2019/6/2 |
応募資格・選考基準 | 経験不要 普通自動車免許 小型船舶免許1級取得者優遇 海が好き!島が好き!カニや魚が好きで、元気でやる気がある方をお待ちしております! |
選考プロセス | ※申し込みは本サイトの応募ボタンではなく、島根県漁業就業者確保育成センターの漁師募集ページから電話、またはメールでお申し込みください。リンクはすぐ下、その他欄にあります。 |
その他 |