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輪島塗りは世界一
これからの職人たちの戦い

日本が長い歴史の中で受け継いできた伝統工芸の一つ、それが輪島塗です。

石川県輪島市で作られるこの漆器の特徴は半永久的に使えると言われる丈夫さを持ち、長年日本人に愛されてきました。

そんな輪島塗も現在は需要後退、後継者不足など様々な問題に悩まされています。

大きな転機が訪れている伝統工芸の世界でも、今回取材した池端漆香堂は新たな方向性を模索している企業です。

今回の募集はそんな輪島塗の現状を知った上で、職人として人生をかけて挑んでいきたい、そんな方に向けた求人です。


伺ったのは石川県輪島市。輪島塗以外にも日本三大朝市の輪島朝市が有名で、観光客も多く訪れるそうです。市の中心街から輪島塗の販売店や博物館があり、輪島塗が市の主要産業であることが伺えます。

町の中心から少し歩いたところに池端漆香堂の工房があります。

拠点は輪島と軽井沢の二箇所。輪島本店では輪島塗の工程の一つ、“塗り”を修めた職人が在籍する工房、軽井沢店では輪島塗の自社ブランド“輪島龍作”の漆器を販売しています。

輪島本店

 

迎えていただいたのは社長の池端務さん。高校卒業と同時にこの道に入り、先代から受け継いだ池端漆香堂を守られて来た方です。

務さんの世代では中学卒業と同時に半数以上の方が輪島塗の関連の仕事についていたそうで、それが当たり前だったと言います。


池端漆香堂は単なる職人工房ではなく、独自ブランドである「輪島龍作」という名前で輪島塗を製造しています。自分たちでデザインから製造まで手がけ、輪島塗の伝統を大切にしながらも挑戦を続けています。最近ではオーダーメイドの注文も多いんだとか。

「輪島塗の器は本当に一生もん。それくらい丁寧に作ってるもんなんや。だからこそ、後世にも伝えていきたい。高くて手が出ないって言う人も多いんやけど、買ってくれた人は絶対に満足してくれる。それくらい誇りを持ってみんな仕事をしているんや」

軽井沢の店舗には輪島龍作のファンの方が毎年のように訪れてくれるそうで、ファンの皆さんとのふれあいが仕事の楽しみだと言います。

軽井沢のお店では商品が所狭しと置かれています。

今回は輪島塗を支える“塗り”の職人の募集ですが、まず“塗り”の職人とはどんな仕事をするのか。

それを知るには輪島塗がどういったものなのかを詳しく知る必要があります。

実は輪島塗を名乗るには伝統工芸として決まったルールや手順を踏まなければなりません。そのルールの中の一つに決まった製造工程を守るということがあります。輪島塗は一人の職人では完結せず、完全な分業体制が敷かれています。そのため、町全体が製造工場になるのです。それぞれの工程をその分野のプロフェッショナルが担当、一つの輪島塗を作るために様々な方が関わります。

今回募集されている“塗り”を担当する職人の仕事は、木の器に対して下地を塗っていく作業がメインの作業です。下地を塗るこの作業も一度では終わりません。ここに丈夫さが売りの輪島塗の秘密があります。

器の端など、消耗しやすい部分に布を巻きつけ補強する“布着せ”。その後、器に生漆と輪島産の地の粉を混ぜ合わせたものを塗る作業。この工程を三辺地といい、3回の下地塗りをします。1回の塗りが終わると研ぎという分野の職人の手に渡り、ここで磨かれた器がまた下地を担当する職人の元に渡る。そうした塗りの繰り返しによって染みた漆が、より器を頑丈にしていきます。一度の塗りにも数週間かかるそうです。

布着せ

 

そうして出来上がったものを上塗りという工程で塗りの仕上げをします。ここまでが塗りを担当する職人の仕事です。

その後沈金、蒔絵という加飾の工程を通し仕上げの呂色という作業が終わって初めて完成します。

それぞれのプロが、これだけの手間をかけて出来上がる伝統工芸品。これこそが輪島塗なのです。

塗りに使うへらなどの道具も
職人が手ずから作っていきます

 

塗りの職人は他の工程を担当する職人と比較して特に若い職人が少ないそうです。

「営業や加飾の分野と比べて、塗りの職人は本当に少ない。加飾の職人は伝統工芸として出品する機会が多いけど塗りにはその部分がない。輪島塗は一番の基本である塗りの職人がいなきゃ成り立たん。その塗りの職人は平均60歳を超えてるんだから問題やな」

輪島塗の特徴である頑丈さを支える塗り職人。池端漆香堂でも多い時は二十人以上のお弟子さんが在籍していたといいますが今ではお弟子さんはいません。

また、伝統工芸として決まり切った製造工程があるがゆえに、機械化など安易には手を出すと、輪島塗として認められなくなってしまうというジレンマがあります。伝統工芸として輪島塗が生き残っていくためには、今後を支える若い塗り職人の存在が不可欠なのです。


お弟子さんになって修行を積む期間は4年間。修行期間が開けると年季明けというお祝いのイベントがあります。昔は年季明けのたびに町中が盛り上がり、テレビにも取り上げられていたそうです。昔はそれぞれの会社でやっていたそうですが、弟子の数の減少などの理由で現在は組合が合同の年季明けを行なっているそうです。

職人を増やすためには、雇用が不可欠。そのため現在は弟子を取る際に組合と市から補助金が出るそうです。しかし、それでも現実は厳しく、人は来ないといいます。

「昔は住み込みで給料もお小遣い程度しかあげられない。それでも弟子にしてくれって人が入ってきてたんや。俗にいう職人の世界やな。今はそういった人は減ってしまった。初任給いくらからと言った労働基準があるやろ。それも人を雇えなくなった理由の一つ。育てなくてはいけないという気持ちはあるんやけど、業界が縮小していて雇う側にそれだけの体力がないんや」

このままではいけない、そう思いながらも、今の社員の生活を守るために人材育成という投資ができない現状です。そんな輪島塗は今後どうなっていくのでしょうか。

「昔に戻っていく気がしてる。大きな工房で職人を抱えてというやり方ではなく、自分でやって、自分で販売して。事業所もどんどん小さくなっていくんやろうな。でもそれだけでは若い人材は育てられないから、本当の覚悟を持って、やりたい、学びたいっていう人がいれば話を聞いてみたいな。やりたいことが塗りではなかったら、他の工程を専門としている工房を紹介することもできるしな」

やはり職人の世界、相当な覚悟が必要です。


もうひとかたお話を聞いたのは息子の池端龍司さん。東京の大学に進学後、大手百貨店に就職。現在は社長の務様と二人で輪島龍作のプロデュースや営業などを担当されています。

これからの池端漆香堂を担っていく若い世代の龍司さんからみた時、輪島塗の現状はどのように見えているのでしょうか。

「伝統工芸の多くが需要後退や後継者不足などで苦しんでいて、輪島塗もその流れに逆らえていないのが事実です。昔みたいに百貨店に置いておけば売れていくっていう時代ではないので、輪島塗を存続させるためには何かしら模索していかなくてはいけないと思うんです」

縮小していく業界から脱却する、そのヒントが軽井沢のお店にあるといいます。

「軽井沢店は20年間続いているんです。これだけ続いているお店ってそんなにはなくて。なぜ長年愛されているのか、そこに今後の商機があると思います。軽井沢店は別荘を持っているような富裕層向けに特化してるんです。百貨店などで販売していると、輪島塗は値段が高く、手を出しづらいとよく聞きますが、この地域では高価でも買っていただける方が多いんです」

本当にいいものだからこそ値段が高い。そこでコストダウンや薄利多売にするのではなく、ブランド価値を向上させることが生き残っていくための一つの方法だと言います。

「実のところ僕は未経験者の採用にはかなり慎重です。周りでも廃業しているところが多くて、職人の道を諦めて、他の仕事をしてる人も多いんです。その人たちから雇って欲しいっていう声もあります。また県外から来てくれる人の中でも、修行が終わった途端にやめてしまう人が多いのも問題なんです」

軽井沢店:外観

「自分でオリジナルの漆器を作りたい人って結構いるんですね。そういった人の場合基礎だけ学んでやめてしまうんです。修行の4年間って正直できることはとても少ないんですが、それでも輪島塗の将来を考え、コストをかけて修行してもらうのに、輪島塗を継いでもらえず出ていかれてしまっては困ります。市と組合の補助金は、どうにか新しい職人を育てようという意思でみんなからいただくものです。だからこそ、県外や未経験者の採用にはかなりの見極めが必要だと思っています」

思いに反して自分の利益のために制度を利用してしまう人もいるらしく、それでは本末転倒です。輪島塗に自分の一生を捧げる、それだけの覚悟が試されます。


最後に輪島塗に対しての龍司さんの想いを教えていただきます。

「僕は輪島塗ってかっこいいしおしゃれだと感じているんです。輪島塗は日本で1位の塗り物です。日本で1位ならば世界で1位なんです。塗りにおいて最高のものが輪島塗。実際海外では輪島塗のことを英語で“JAPAN”っていうくらい、輪島塗は世界に誇れる工芸品なんです。だから僕は輪島塗を今後も生き残っていけるものにしたいんです」

輪島塗という伝統を理解し、それを未来にも繋いでいきたい。その想いに認められる覚悟を持った方を求めています。生半可な気持ちではなく、自分がなぜ輪島塗を修めたいのか。応募の際は一度そこを考えて、自分の気持ちをしっかりと言葉にできる必要があります。

求人募集要項
企業名・団体名伝統工芸輪島塗 わじま龍作/有限会社池端漆香堂
企業・団体情報【業種】 輪島塗製造・販売
【設立】 1940年4月
【資本金】 8,000,000円
【従業員数】 4名
【店舗】 輪島本店、軽井沢店
募集職種漆塗り職人
雇用形態正社員
仕事内容漆塗り職人として漆器製造業務に従事・輪島塗製品の下地、中塗工程の作業などを行っていただきます。(伝統的な手法により製品に漆を塗り重ねる作業です。)
採用人数1名
給与月給 約150,000〜円(能力に応じて変化します)
福利厚生賞与あり(年2回)
社会保険あり(厚生年金、健康保険、雇用保険、労災保険)
退職金あり
勤務地石川県輪島市鳳至町畠田46
勤務時間8:00〜17:00 
昼休憩1時間(12時〜13時)
休憩15分(15時〜)
休日・休暇週休二日(土日)
有給、年末年始、長期休暇あり
住宅輪島市による住居支援あり
募集期間2020/2/2
応募資格・選考基準輪島塗職人として一生を捧げる覚悟がある方
選考プロセス1. 本サイトからのお申し込み
2. お電話にてお話を聞かせてもらいます(やりたいことによっては別の工房を紹介する場合もあります)
その他

池端漆香堂ホームページ

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