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伝統と革新が交差する場

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湯沢市岩崎は、秋田県の南部に位置する豪雪地帯。この地に慶応3年(1867)から脈々と受け継がれてきた蔵元がある。幕末の江戸末期、創業者・高橋茂助がこの地で事業を興してから七代に渡り醸造を続け、150余年続く老舗、ヤマモ味噌醤油醸造元だ。毎日の食卓を豊かにする調味料を醸すことで人々の生活を豊かなものにしてきた。


伝統ある蔵元は純和風の装いのイメージが強いが、ヤマモ味噌醤油醸造元には新しい時代の風が心地よく吹きぬけている。ショーケースに整然と並べられた商品に、ヴィンテージのソファー、スピーカーからは洋楽が流れ、窓の外に広がる日本庭園には和の美しさが表現されている。日本古来の精神を大切にしつつも優れた洋式の美を随所にあつらえた和魂洋才の空間。ヤマモ味噌醤油醸造元の姿勢が垣間見える。


ヤマモ味噌醤油醸造元・七代目、髙橋泰さんにお話を伺った。

もともと家業を継ぐつもりのなかった泰さんは、建築家を目指していたそうだ。しかし、時間の経過とともに取り巻く環境は変化し、大学4年生の時に大学院に行くか、就職するか、家業を継ぐかという人生の岐路に立つことになる。

「自分が死ぬ瞬間、もし家業を継がないで途絶えさせてしまっていたら、きっと後悔するだろうと思って家業を継ごうと決断しました。自分の手で家業を潰すのであれば納得がいくと思って」

その後、東京農業大学に入学。2年をかけて醸造学を学んだ後、大手醸造会社での修行を経て27歳に七代目となる。

―伝統ある家業を継ぐというのは大変だったのではないでしょうか?

「27歳の1年間が一番精神的に辛かったですね。七代目であり最年少という立場ながら、時代に合った価値観に変えていかないといけないですからね。社員が当たり前だと思っていることも、僕みたいな新しい人間からすると改善点が見えてくる。でも、社員が今までは当たり前だと思っていたものだから、当然軋轢も生じましたね。まずは衛生面を改善して、危険箇所をなくすことから始めました。これは僕に限らず、どの産業でも世代交代の時はやるべきことなんです」


世代交代の際、社員からすると年下で、現場の経験も自分達より浅い七代目からの指示に困惑した様子が窺える。生き残るために必要なことでありながらも、そこに立ち向かえる精神的な強さがなければならない。

「衛生的なことを解決してから、そこに対して新しいことを施していくんです。少しずつ余白を作る。新しい道をつくるには余白が必要ですから。その中には物理的なことと時間的な余白もあります。今の時代に合わせて最適化すると不要な部分が出てくるので、その不要な部分をそぎ落としてできる余白を新しいことに当てるというプロセスですね」

後世に何を残していくのか、何を変えていくのか。数世代も続く伝統産業は、まさしくこうした営みによって支えられてきたのだ。だからこそ安定しつつも、新しさによってもたらされる危うさがある。しかし、歴史あるものは一世代では生み出すことのできない慈しみと美しさがあり、この価値こそ時代を超えて紡ぐ必要があると泰さんは考えている。


泰さんは企画から広告、デザインまで幅広く行い、蔵人の概念を覆す。就任1年目にしてブランディングに取り組み、キャッチコピーやイメージを確立。

「最初は毎日苦しい状態で、楽しみがまったくありませんでした。ただ、自分の商品や活動を見て面白いって言ってくれたりすると、その苦しみがどんどん楽しみに変わっていくんですね。日々の努力は微々たるものですけど、それを続けることが大切です。それをやり続けることで楽しさが増えていく。12年かけて自分の活動が広がってきたと同時に、少しづつ自分を肯定できるようになったんです」

紆余曲折しながら歩んだ時間が、伝統を継ぐに値する自分を作り上げていく。泰さんが自分に確信を持てたのは35歳になってからだったそうだ。


そして、様々な国の展示会に参加し、泰さんは日本の味噌醤油はコンセプチュアルではないという問題を抱えていることに気がついた。日本の郷土食である味噌醤油を外国人に伝えるのは簡単ではない。どうすれば日本の魅力が伝わるのか。コンセプトが確立されていない味噌醤油に違和感を感じていたそうだ。

そこで、‘Life is Voyage「人生は航海である」’をテーマに掲げ、2012年から外国に目を向ける。

「やっぱりファウンダーになりたいと思う気持ちがどこかにあって。この業界だと創業者にはなりたくてもなれないじゃないですか。それと、先人たちが作ってきたものを世界がどう評価するのかということにも興味があったので、第二の創業と言われる海外展開に挑戦したんです。製品を売るだけではまだ未熟。精神性や営みを伝えてこそ蔵元なんです」

その商品を生み出した土地、文化、歴史から生み出される世界観が商品のディテールに宿る。そのためか、ヤマモ味噌醤油醸造元の商品は美しく無駄がない。

細部にまでコンセプトが行き届いた商品は、国内外において高く評価され、2013年度の「グッドデザイン賞」を受賞。また、「はばたく中小企業300」、経済産業省「地域未来牽引企業」にも選定されている。


―この業界ならではの難しさはありますか?

「僕の業界は改革的なことをしないと業界としては続いていかないんですけど、マーケットからは変わらないことを求められているんです。調味料が毎年、味が変わってはいけないですから当然と言えば当然ですよね。変化を望まない業界の中で、企業としては変化をしていかなければいけないという「ねじれ」や「矛盾」の中で挑戦していかねければいけないんですね」

昔ながらの製法と現代の手法を取り入れつつ、求められているものと、求めなければならないものの間で試行錯誤を続けているようだ。

「味噌醤油の文化的な立ち位置を変えていきたいんです。今後は、味噌醤油の文化の無いところに新しい文化を定着させて、戦略的に能動的に仕掛けたいと思っています。醤油味噌の文化的な地位を向上したいんです」

そう語る泰さんは、伝統の先にある世界が見えている。日本に長く続く精神性というものが世界において競争力を持つと。そのためにも、今も残っている文化的価値をさらに進化させていくことに挑戦しているのだ。


―仕事内容は具体的にどんなことをするのでしょうか?

「醤油味噌の仕込みはもちろん、原材料を調達したりとか、あとは季節の仕事も多いですね。屋根のペンキ塗りとか。庭の掃除。当然、雪国なので雪下ろしもあります。正直、雑務は多種多様ですね」

「あと、蔵人は外部との接触が少ないんですけど、うちではお客さんに触れるとこは必ずさせます。販売もですし、いずれはツアーのガイドもしてほしいです」


江戸末期から150余年続く蔵元であるヤマモ味噌醤油醸造元の工場と庭園、蔵を巡る、発酵体験ツアー「ファクトリーツアー」。一般の方、外国人、議員連盟の方や学校の教師など幅広く参加しているそうだ。

「産業観光が日本における新しいビジネスの切り口だと思っています。酵素や発酵の技術の話はもちろん、蔵のストーリーや歴史、コンセプトやこれからの伝統産業の話。100年以上の歴史のある庭園の話まで幅広く説明できるようになって欲しいですね」

今後は蔵の中で試食できるスペースや、アートギャラリーを作る予定だそうで、さらなる革新への飛躍が期待できる。


―今回の募集で、どんな人に来てもらいたいですか?

「仕事でも趣味でもいいですけど、文化的なものを持ってる人だといいですね。あとは変化が好きな人。ただ、うちは基本的には同じことを続けるルーティンワークなので、日々の積み重ねの中から社会を大きく動かせるイノベーションが起こるうると信じれる人が向いていると思います。当然、苦手なやりたくないこともしないといけない。ただそれが変化に繋がると信じて行動する。そんなメンタリティーが欲しいですね」

発酵や食品の基礎知識よりもメンタルや人間性の方を重要視しているとのこと。また、長く続く会社ならではの世代間闘争。泰さんの父の世代の考えと、泰さん世代の考えは世代感の違いがあるが故に、どうしても衝突が起きてしまうのだとか。ここをうまく接着させることが大切なようだ。


泰さんの目指す先には独創の世界から生じる革新がある。皆が納得する共創ではなく、時代を飛び越えるインパクトをもった独創を生み出す可能性を探している。

「主観的な領域でないと面白いことはできないんです。大阪万博の太陽の塔は独創でしか作れないでしょ?共創だと、みんなは納得するけど時代を飛び越えるインパクトは産み出せないんです。独創でしか成し得ないものがあるんですよ」

だからこそ、「意見や自分のやりたいことを言ってもらうことが重要。僕が自分の会社に戻ってきたときに実際やってたことですから。言われたことはもちろんこなして、作業するたびに自分で発見し、それについて企画、提案して予算くれってのは積極的に、どんどんやって欲しいです」と泰さんは語る。


伝統は革新の連続が時間の経過とともに紡ぎ出されるもの。泰さんは伝統ある蔵の跡継ぎとして、7回目を迎える革新の担い手である。

新しい価値観を創ろうと挑戦する人は魅力的だ。その知識は幅広く、思慮深い。全く違う世界に連れ出してくれるこの人の話を、いつまでも聞いていたい。そう思わせるような人。

シンパシーを感じ、進路に迷っている学生やローカルで起業したい社会人などターニングポイントを迎えている人々が泰さんに話しを聞きにくるそうだ。

伝統と革新が交差する場所から生まれる可能性を追求し、挑戦を追い求められる人はぜひ。まずは、お話を聞きにいくことからでも。

 

 

求人募集要項
企業名・団体名高茂合名会社
企業・団体情報【業種】製造業、サービス業(ファクトリーツアー:産業観光)
【創業】1867年
【資本金】150万円
【従業員数】11名
募集職種技術職
雇用形態正社員
仕事内容・味噌醤油の仕込、火入、充填作業
・商品の梱包、発送、配達業務
・店頭販売、接客
・ツアーガイド
採用人数若干名
給与145,000円〜200,000円
昇給・時間外手当あり
福利厚生・賞与あり(年2回)
・社会保険(厚生年金、健康保険、雇用保険、労災保険)
勤務地秋田県湯沢市岩崎字岩崎124
勤務時間技術職 8:0〜17:00
営業職・事務職 8:00〜17:30
休日・休暇年間休日数87日(日、祝日、土曜シフト休)
お盆休み、年末年始休暇あり
募集期間〜2019/1/21
応募資格・選考基準普通自動車免許
基本的なパソコン操作
選考プロセス1.本サイトからのお申し込み
2.書類選考
3.面接
※不採用理由についてのお問い合わせにはお答えできません
その他

高茂合名会社/ヤマモ味噌醤油醸造元HP
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