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2020年から始まる
地方創生の「次の5年」とは

2020年を迎え、いよいよ東京オリンピックが開幕されます。3月からは聖火リレーが福島から始まり、最終の東京まで全国を回ります。日本全国、各地域のPRにはうってつけの機会になりそうです。

そんな中、昨年の12月20日に今後の地方創生のあり方を見据える上で重要な指標にもなる、第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が発表されました。「まち・ひと・しごと創生総合戦略」とは2014年から始まった事業で、人口減少、超高齢化社会の問題に対して東京圏への過度な人口集中を是正し、各地域が各々の特色を活かして自律的で持続的な社会を作っていくという地方創生の取り組みを促すものです。

第1期が2014年〜2019年までの5年間で、次の2020年から2024年までが第2期となります。では、これからどのような目標が新たに定められ、どういった活動をしていく必要があるのか、改めて学び直していきましょう。

 

第1期の実績、反省点

第1期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、(1)地方にしごとをつくり、安心して働けるようにする、(2)地方への新しいひとの流れをつくる、(3)若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる、(4)時代に合った地域をつくり、安心なくらしを守るとともに、地域と地域を連携する。という4つの基本目標が定められ、その実現に向けて活動してきました。

実際に下図の通り、地方の若者の就業率や訪日外国人旅行者数、農林水産物・食品の輸出額などが増えており、しごとの創出に関しては一定の成果が出ていることがわかります。また女性や高齢者の社会進出が進んだことによる就業者数の伸びや、望まずに非正規で働いている人の数は減少していることなど、労働力の確保や、安心して働けるといった点でも多くの成果が出たのではないでしょうか。

 

出展:まち・ひと・しごと創生長期ビジョン(令和元年改訂版)及び
第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(概要)

 

ただ、同時に反省点としてあげられているのは上図の青いグラフです。これは東京圏への転入超過数を示しています。2007年のバブル期と比較すれば少ないものの、地方創生の取り組みが始まって以降も東京への人口流入に歯止めがかかっていません。また、企業が感じる人材不足感に関する調査では大企業よりも中小企業の方が人手不足に悩まされていることがわかります。

出展:第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」

 

東京への人口流入は全く止まっていないのです。地方で大多数を占める中小企業が人手不足を感じているのは明らかでしょう。以上の2点から基本目標の(2)地方への新しいひとの流れをつくる、に関しては成果が出ていないことがわかります。では、こういった問題を解決するために、今回の総合戦略ではどんな変化があったのでしょうか。

次の5年に向けて新たに盛り込まれた横断的な目標

 

今回注目すべき変更点は、第1期に定められた4つの基本目標を横断する「多様な人材の活躍を推進する」「新しい時代の流れを力にする」といった2つの横断的な目標が定められたことです。

 

出展:まち・ひと・しごと創生長期ビジョン(令和元年改訂版)及び
第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(概要)

 

「多様な人材の活躍を推進する」では“多様なひとびとの活躍による地方創生の推進”“誰もが活躍する地域社会の推進”の2項目から成り立っています。これは地域内外問わず、地域に関わる一人ひとりが以前よりもその能力を積極的に発揮することで、真に地域社会の発展を目指すというものです。ここでは若者はもちろん、女性の就業率の向上以外に、高齢者、障害者、外国人といったより広い枠組みの人々が地域に根ざし、それぞれが役割を持って活動をすることを目標としています。

「新しい時代の流れを力にする」では“地域社会におけるSociety5.0の推進”“地方創生SDGsの実現などの持続可能なまちづくり”の2項目が挙げられています。Society5.0は内閣府が定める、仮想空間と現実空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、現在の情報社会に続く新たな社会を指すものです。

この社会ではIoTが進むことで人とすべてのものが繋がります。その根幹を支えるのは人工知能(AI)やロボット、自動走行車などの技術であり、様々な知識や情報を共有し、新たな価値を生み出すことで課題や困難を克服します。

これらのハイテク技術は東京が主戦場の分野に思いがちですが、実は地域社会にとって恩恵が大きいものなのです。IoTの普及により業務の自動化による人手不足の解消や、ITネットワークによる地域見守りサービスによって、高齢者や子供でも利便性高く、安心して生活できる社会が実現できます。課題が多い地方だからこそ、これらの技術の導入を推進するべきなのです。

もう一つのSDGsに関してはコラムでも度々取り上げてきた内容です。(参考:今後取り組みが必要とされるSDGs(持続可能な開発目標)とは?)SDGsの理念に沿って地域活性化を進めることは、政策全体の最適化や地域課題解決の加速化という相乗効果が期待できるます。地方にとってSDGsを考えることが重要だということが、今回横断目標に定められたことで、改めて指摘されたのです。

今回の総合戦略はあくまで次の5年間の方針であり、具体的な推進方法などは明記されていません。ですが、ここで示された課題は国だけが取り組まなくてはいけないものではなく、地域に住む人々こそが最も積極的に考え、行動する必要がある課題です。だからこそ、次の5年でどんな成果が出るのだろうといった客観的な目線ではなく、この方針に沿って、5年間で成果を出せるよう、どんな行動をするべきかと自主性を持って取り組むことが大切になってきます。