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新しい仕事のカタチ
「起業」とは?

働き方の多様化や、若い世代の価値観の変化などを背景として、大都市圏での生活にこだわらず、地方に移住する人が多くなっています。それに伴い地方で起業する方が年々増えています。少し前まで起業する場所といえば都市部というイメージが強かったのですが、地方におけるITや物流などのインフラの発達、働き方改革や地方創生といった国の政策もあり、地方でも起業しやすい環境が整えられてきています。

地方で起業家が増える3つの理由

場所にとらわれない働き方の広がり

ライターやクリエイティブ系の仕事などは、都市部にあるオフィスなどから発注を受けた仕事を自宅で行い、オンラインで納品するという手法があります。ICTを活用することで、場所や時間にとらわれない柔軟で新しい働き方が増えています。最近ではクラウドソージング市場も広がってきており、クラウドソーシングで生計を立てている方もいるようです。2020年度には、2,950億円の市場規模になるとのこと。仕事がオンライン上で解決できるのであれば都市部に住む必要はありません。インターネットが発達したことによって、都市部で生活していた時と変わらない形での就業形態を維持したまま地方で田舎暮らしを実現している人もいます。他にもブロガー、アフィリエイト、メディア運営など場所にとらわれない生き方が広がりを見せています。また、最近では移住することだけにとらわれず、田舎と都市を行き来する二拠点生活というライフスタイルが注目されています。

豊かな生活を求めて

やりがい、生きがいをテーマに移住する人も少なくありません。小確幸(しょうかっこう)は村上春樹の造語で、『小さいけれども確かな幸せ』という言葉の略語ですが、小確幸を求めて移住する方が増えているようです。都会のストレスから解放され、人に雇われるという就業形態からも脱却することで、自分に正直なライフスタイルを確立しています。人と人との有機的な繋がりを重視した働き方を目指す方が多いようです。

社会起業家の登場

地域社会においては、人口減少、高齢者、福祉から、子育て支援、まちづくり、観光等に至るまで、多種多様な社会課題が顕在化しつつあります。このような地域社会の課題に使命感を持ち、課題解決のために取り組むソーシャルアントレプレナー(社会起業家)も地方で増えてきています。営利・非営利にかかわらず、よりよい社会を目ざし、通常の企業活動を通して社会に貢献するために起業するのです。

地方で起業するメリット

ライバルが少ない

人口が少なく市場規模は小さい反面、競合が少なくブルーオーシャンが多いのも魅力の一つです。都会のようにビジネスが乱立している訳ではありません。特にクリエイティブな領域の職種において顕著で、地方の中山間地域や離島にはライバルがほぼいません。最近では地方創生の一貫として、行政、民間業者は情報発信に力を入れているため、Webサイトの構築やWebメディアの運営ができるデザイナーやエンジニアは重宝されています。他の地域の業者に依頼するより、地域に現金を落とすといった点から、移住後すぐに仕事を依頼されることも少なくありません。

農業、漁業、畜産はそもそも新規参入が少ないことに加え、深刻な高齢化のため土地などの資源が集まりやすくなります。農家は高齢化により農地を手放すので農地の集積化が進みます。今までは出来なかった大規模農業が可能になるのです。漁業では、これまで取得しにくかった漁業権がスムーズに取得できるようになるでしょう。

田舎は資源の宝庫

地方には使われていない資源、放置されている資源が沢山あります。地域住民には当たり前でも都市部の人には特別な食材、体験、場所など住んでみなければ気付かない資源があります。アイデア次第でビジネスを生み出すことは可能なのです。

ランニングコストが安い

ランニングコストが大幅に低く抑えられるというメリットもあります。事務所の家賃や各種の経費は、都市で起業をすればそれだけ大きくなりますが、地方で同様のことを行なった場合にはかなりの金額を削減することが可能です。その分の費用を有意義に回していくことで、事業のクオリティを高めていくことにも繋がっていきます。

場所が整えられている

通信環境などが整った共同スペース「テレワークセンター」が全国に広まっています。その地域でテレワーカー達が出会い、様々な新しいプロジェクトが生まれているようです。テレワークは新しい仕事のカタチとして国も注目しています。総務省は地方にテレワークセンターを整備することで、ワーク・ライフバランスの向上、地域の活性化等に貢献し、地方創生や一億総活躍の実現に寄与するとしてテレワーク事業を推進しています。徳島市神山町の他にも鳥取県鳥取市や兵庫県丹波市、島根県松江市など、IT企業の誘致を積極的に行っている自治体は年々増えているため、ITでの起業を考えている方にはメリットが大きいと言えます。

サポート体制が整っている

地方によっては人口減少を食い止めるための策として、移住者に対して助成金や補助金などのサポート体制を整えている地域が沢山あります。起業に関する設備の助成はもちろん、事業が安定するまで生活費を支給してくれる地域や、専門家を派遣してくれる地域など様々なサポート体制が整っています。特に農業、漁業、畜産は高齢化が深刻な問題となっているため、挑戦したい気持ちさえあれば行政もしっかりバックアップしてくれます。定住し、起業するとなれば納税も期待されるため、このようなシステムのある地方自治体は多く、今後も増えていくことが予想されています。このような制度も有効活用し、田舎で起業する方法の一環として頭に入れておくと良いでしょう。

起業するためには

地方で起業する方法としては、基本的には都市部での起業と変わりませんが、その業種には気を配る必要があります。遠隔地であることがデメリットとして受け取られたり、また実際に不都合が生じてしまうような業種であれば、再考する必要があると言えます。現地をベースに起業する場合は、目新しいことに対して寛容であったり、さらに一歩進んで面白いと捉えられるような風土のある地域であれば、うまくいく可能性が高いと言えるでしょう。中には排他的で保守的な地域もあるので、事前に確認しましょう。

地方の起業は、自身のライフスタイルと、有益な企業活動の両立が比較的容易なため、最近では非常に注目度の高い行為となっています。そのメリットをしっかりと認識することで、双方の成功を得られるでしょう。